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by coiori
silence
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21時の白夜。

萎れた夏の花。

影。

すみれ色の空の匂い。







最後にあの植物園を出たとき、わたしはひとりだった。

冷えていく階段でgargoyleと見つめあいながら、古びた壁伝いに腰掛けた。
やっと帰れる。という気持ちと
もういちどこられるかな、という不安で
なんだか動けなくなったのだ。

風がゆっくりと藍色に染まりきった頃、お尻をはたいて、キャブで帰った。


リビングに入ると、
Maryはいつものまずいサンドイッチを出してくれた。
パンはパサパサ。
ずっと待っててくれたんだ。


窓の向こうの庭、闇の中で無造作にヒースが揺れる。
サラサラと音がする。

でもそれは部屋の明かりに触れるとすぐに、消えてしまうのだ。


・・・ここはどこも しんとしていると思った。

しんとした建物。

しんとした空気。

しんとしたまま賑やかで、

しんとしたまま明るくて、

しんとしたまま、いじわるとやさしさとユーモアを紡ぐ。


私は暗いから、そういうところにどうしようもなく惹かれるのだろう。

うたちゃんと話しているとよく、どこで暮らしたいか、という話になる。
わたしの答えはいつも地元かここなのだけれど
故郷でもないここを愛しているのは、
きっとわたしの根っこと同じ周波数の静けさで ここが出来ているせいなのだ。


みんなとキスをして夜明けまで少し眠ったら、
数時間で刺青のPeterに起こされた。

Peterは残忍なポパイみたいな人で、最初に会ったときは怖かったっけ。

かわいいプラスチックパックを差し出される。
空港で食べられるようにと、夜通しおべんとうを作ってくれてたみたい。
つくづく、外見と正反対の人。


こんなに落ち着いていられた場所はなかったな。。。


夢を見てたのだとイヤだな。
迎えのリムジンに乗ったら、魔法が解けて、言葉を忘れてしまいそうだった。
だからたくさん言葉を伝えてから手を振った。

凍える石畳を何歩か進んで、みんなしんと見送ってくれた。


うん、この静けさ。

何処も彼処も。
by coiori | 2008-07-31 02:45 | 散文
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